あらすじ
私は愛されるはずのない”第二妃”
うっかり陛下の子を妊娠してしまいました~王妃ベルタの肖像~
正妃のいる国王の元へ、「第二妃」として愛なき政略結婚をすることとなった辺境領主の娘ベルタ。
しかし子のない国王夫妻をよそに、後継ぎとなる子を妊娠してしまったことからベルタは王宮の権力闘争に巻き込まれていく。そして次第に王ハロルドとの関係にも変化が…?
「小説家になろう」発、激動のヒストリカル・ロマン!!
こんな人におすすめ!
①中世ヨーロッパ世界好き
②政治的展開嫌じゃない
③政略結婚的展開嫌いじゃない
④絶妙な恋愛要素がいい
⑤宮廷ドラマ好き
全部当てはまったらおすすめです。
原作と単行本
『王妃ベルタの肖像』
原作:西野向日葵(富士見L文庫/KADOKAWA刊)
人気WEB小説の漫画化です。
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世界観
中世ヨーロッパ的世界です。
ベルタ
主人公。
南部を支配するカシャ族の長、メセタ太守ヴァレリオの娘。
黒髪ではっきりとした性格。
政略結婚のため王都に向かう。
ハロルド
アウスタリア王国の6代目の王。
後継者争いに打ち勝ち、庶子でありながら王位に就いた。
若く冷めた王。
マルグリット
王妃。
流産を繰り返し、子に恵まれないことから、精神的に不安定になりつつある。
東方に位置する大国の王女。
感想
血統や古いしがらみ、それに強く立ち向かう女性を描いたヒストリカルな作品。
王妃マルグリットが王にいいはなった「私の王統の”血”であなたの半身に流れる”罪の血”を贖いたかった・・・」「貴方を救って差し上げたかった・・・・」
これが物語の主なのかなと思います。
王であれ族長であれ、皇帝であっても、そして神であってもみな血統にいきつきます。
国を安定させるためにせよ、残された家族を守るためにせよ、どれほど優秀な君主であっても血統に縛られるようになります。
大国ローマで共和制組織を維持しつつ、帝政へ自然に移行させたアウグストゥスも(2代目は皮肉にも養子だが)、フランス市民革命で頭角を現し、ヨーロッパを席捲したナポレオン(2世は2週間だけ帝位に、のちに21歳で死去)のような己の力で道を開いた天才たちもその限りではありません。
これまでに多くの指導者が世襲を望んできました。
本作に登場する国王ハロルドからも、庶子(正妻ではない母から生まれた)であったことからか、血統に対しての執着が感じられます。
妻は同じ王統の娘であり、”純血”であることを誇りに思ってるマルグリット。
現実でも、”純血”を求める文化はありました。
オーストリアの名門ハプスブルク家がいい例です。
血縁関係によって、一地方領主から、「太陽の沈まぬ帝国」とよばれる世界帝国を作り上げた強大な一族です。
なんとフィリピンの由来は真裏にあるハプスブルク家の王子フェリペからとられています。(父はスペイン、ドイツの王。のちにスペイン、イングランド、ポルトガルの王位を得る)
”純血”の先には近親婚があり、不妊や奇形児という生物学的なリスクもはらんでいました。
それでも、ハプスブルクの血は数百年及んで世界に影響を与え続けました。(ナポレオンの妻もハプスブルク、第一次大戦のきっかけもハプスブルク家のオーストリア王子が暗殺されたせい)
本作で登場する正妻マルグリットが血に誇りを持つのもあながち間違えではないのです。
権威を得るには、戦争、災害、疫病、不況、など人が絶望に落とされた時に活躍しないといけません。
しかし、血は人に無条件で権威を与えてくれます。
安定と血は決して離れらない関係なのです。
このハプスブルク家を意識したのかはわかりませんが、ハロルドが王位についているアウスタリア王国の立地はかつてのスペイン王国(スペインも起源をたどるとアストゥリアス王国に行き当たる)のようですし、マルグリットの母国もかつてのドイツ、神聖ローマ帝国もしくはオーストリアに見えます。
どちらも、ハプスブルクが影響力を持った国であり、そういった歴史的なニュアンスも含んでいるのかもしれません。
だた、ヒストリカルロマンとして読むときに、一つ気になるのが文化描写ですよね。
確かに、ベルタはまだしも、ハロルドはめちゃくちゃイングランドぽいですし、息子ルイ(今の英王子の名前だけど)はフランス感たっぷりです。
マルグリットもフランス的です。
アウスタリア王国はポルトガルっぽい、ベルタの故郷メセタなどはスペインぽい、というか南部文化がカルタゴ(かなり昔スペイン南部に植民してた国)ぽく感じます。
ベルタの父親、メセタ太守ヴァレリオは名前はラテンぽいですが、太守という言葉が位置的にイスラムっぽいです(スペインの位置するイベリア半島、特に南部はイスラム勢力が支配していました、唯一抵抗できていたのがアストゥリアス王国)。
側室だとか後宮があったり、そのわりに「国教であるプロスペロ教会が2重結婚を認めていない」など宗教感もよくわかりません。(カトリックなら側室は無理、愛人はいただろうけど)
血統をメインに書くなら、文化要素も統一したほうが…….
なんてのは個人的には意味のないことだと実は思っています。
ヨーロッパ的世界観であれば、混ざっていて当然ですし(現実もそう)、ファンタジーであればもっと変でいいと思ってます。
むしろ、血は混ざるというテーマがあるのあれば、文化も混ざって当然です。
血に縛られた王と、自由を求め、息子をあんじる女王。
本作はベルタという強く、聡い女性が、いかにして厳しい立場から安心と安全、そして幸せをつかむのか、そして王がどう影響され変わっていくのか、それが主題なんだと思います。
血の呪縛に苦しむ男と自由にそして強く生きる女性。
漫画版はまだ序盤ですが、ここから一層の苦難と、そしてその打開が見れるのかと思うと期待感が高まります。
ぜひ読んでみてほしい一作です。
最終話を読んで
思ったよりあさっりと終わってしまいました。
原作1巻分で終了したようです。
悪くないですが、ちょっと物足りないので続編にきたいですね。
おわり
随時更新します。
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読んでくれてありがとう!
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