最終話まで読んだ感想
抑圧された社会から自由な社会へという、歴史的な流れから、人が強大な敵に存亡かけて戦うテーマの作品がたくさん作られてきました。
人が苦難に立ち向かう姿というのは、いつ見ても感情を揺さぶられるものです。
人気があるのもうなづけます。
独裁者、宇宙人、ゾンビ、病原菌、モンスターなど、みなれた敵を扱った作品ばかりが目立つ中で、『進撃の巨人』は日本から発信された、対巨人サバイバル漫画です。
なぜ巨人なのか?というのはあまり意味のない話で、生きることの不自由さ、苦しさそういった人間の普遍的な思いをぶつける相手がたまたま巨人だっただけです。
とはいえ、一巻から巨人が人を、それも主人公の大切な人を食べるという衝撃のシーンがあったからこそ、話題にもなったし人気にもつながったのだと思います。
絶妙にでかい巨人でなければ、あの絶妙な顔の巨人でなければ、あれほどの圧倒的な絶望感、悲しく打ちひしがれる気持ちを感じ取れなかったでしょう。
『進撃の巨人』に登場する巨人たちは、ただ大きいだけはなく、嫌悪感を抱く見た目であり、また無垢な恐ろしさ、人が蟻の命を気にしないのと同じくらい、無情な恐怖を持ち合わせているのです。
巨人に対するのは、常に強い目的意識(巨人を駆逐する)をもつ主人公エレンたち。
多大な犠牲、絶望、恐怖、逃げ出したくなるような世界で、エレンたちは目的を果たすために必死に戦います。
しかし、何か1つうまくいけば、また新たな問題が。
大きな問題を解決できたと思ったら、まったく別次元の事実が存在していた。
壁の外へ行けたら自由な世界が待っている。
そう信じていたエレンたちはもっと深い絶望に落とされます。
人間の人生というものは苦難の連続だなんていいますが、『進撃の巨人』は苦難の詰め合わせといっていいでしょう。
どこかに道はないか必死に模索する主人公たちを見ていると、自分も頑張らないとなんてつい思ってしまいます。
『進撃の巨人』が完結して思うのは、人は争いを自分ではやめられないというテーマで最後まで通し切ったすごい漫画だということです。
巨人がいたから、人類全体の敵がいたからこその平和や自由があり、巨人を駆逐したら失う平和や自由があるという皮肉。
私たちは、強大な敵に挑む物語が大好きです。
苦難に負けず挑み続ける姿を見たがっています。
結局それって、人は共通の敵がいないとうまくまとまれないからかもしれません。
圧倒的な敵がいてくれるから安心してまとまれる。
いないと、内でもめてしまう人の性がわかっているからこそ、求めてしまうのでしょう。
抑圧された社会から解放されたって、その先にあるのはまた別の種類の抑圧。
人間は同じ失敗を延々と繰り返しています。
エレンは最後の選択をします。
エレンだけなく周りも選択をします。
その結果がどうなるのか。
再び愚かな争いの世界を作るのか、新しい世界を作るのか。
その意味では、考える楽しみも適度に残してくれたということで、最初から最後までよくできた物語だなって思います。
おわり
初めて読んだのが高校生の時だったので、もう11年もたつのかと思うと恐ろしくなりますね(笑)
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読んでくれてありがとう!
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