全農林警職法事件とは?わかりやすく解説!

最高裁判所昭和48年4月25日大法廷判決

みなさん、公務員がストライキなど争議行為を行っていたらどう思いますか?

全体の奉仕者であるので公務員は許されない?
1人の労働者として許されるべき?

判断しづらいですね。


今回は、この公務員の労働基本権問題に一石を投じた『全農林警職法事件』を解説します。

  • 公務員が争議行為を画策
  • 違法な行為として起訴
  • そんな法律は違憲では?
  • 労働基本権は公務員にも保障されている
  • 最高裁は公務員の特殊性から合憲判断
  • 制約ある代わりにちゃんと代替え措置もとられている
目次
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事件の経緯

突如、内閣が警察官職務執行法改正案を提出

昭和33年10月のことです。


ときの内閣(第2次岸内閣)は警察官職務執行法改正案を衆議院に提出しました。
警察官が職務を執行するにあたって、どんな手続きを取ればよいかなどを定めた法律です。

周知もなく突然の事でした。
全国に波紋が広がります。

全国で反対運動、その波は農林省にも

改正案は、警察官の権限を強化、「凶器の所持」調べを名目とする令状なしの身体検査や保護を名目とする留置を可能にするものでした。


この改正案では労働者の団体行動が抑圧される。
全国で労働者団体による反対運動が展開されます。


この混乱の中、Xさんが登場します。
当時、農林省(今の農水省)の労働組合(全農林労組)で役員をしていました。

農林省前で開催された職場大会において

争議行為に参加してほしい!

約3000名の職員に訴えかけました。

国家公務員法違反で起訴される

Xさんたちの行動は、あおり行為を禁止する国家公務員法98条2項に違反するとされました。

そして同法110条1項17号により起訴されます。

職員は、政府が代表する使用者としての公衆に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をなし、又は政府の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおつてはならない。

国家公務員法第98条2項

第百十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

十七 何人たるを問わず第九十八条第二項前段に規定する違法な行為の遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおり、又はこれらの行為を企てた者

国家公務員法第110条1項17号

争点

  • 公務員に労働基本権が保障されている?
  • 保障されるとして、労働基本権に制約をかけるような法律に正当性はあるのか?
  • 制約は憲法28条違反ではないか?

勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

憲法28条
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判決

最高裁で有罪が確定

Xさんらは、高裁での敗訴を受け、最高裁に上告していました。
しかし、最高裁での判決も変わらず有罪でした。

  • 憲法28条の労働基本権の保障は公務員にも及ぶ
  • 公務員の地位の特殊性から、必要やむをえない限度の制限は合理的
  • 制約に見合う代償措置を受けている
  • よって国公法98条2項、110条1項17号は憲法28条に違反していない

憲法28条の保障は公務員にも及ぶ

28条の言う勤労者とは、労務を提供することで生活のもとを得ている者をいいます。


公務員も同じですよね。
働いて給与を得て暮らしています。
つまり公務員も勤労者。
憲法28条の保障が及ぶ

公務員の地位の特殊性と職務の公共性からして制約はやむを得ない

公務員の地位の特殊性と職務の公共性にかんがみるときは、これを根拠として公務員の労働基本権に対し必要やむをえない限度の制限を加えることは、十分合理的な理由がある

公務員が仕事を放棄したら大変ですよね。
公共というのは皆で使うという意味があります。
その職務に従事している以上、放棄させないというのは一定の合理性があるというわけです。

そもそも勤労条件向上のための活動に利益がない

公務員の給与や、勤労条件は、原則国会の制定した法律、予算によって定められています。(財政民主主義)

ということは
➡ストライキやロックアウトなどの争議行為で勤労条件が変わるわけではない!

また、民間企業であれば
争議行為➡過大な要求➡業績悪化➡勤労者に不利益
このように、勤労者側もやりすぎると不利益を被ってしまいます。

しかし、公務員は
争議行為➡過大な要求➡財政悪化➡国民に不利益
基本的に公務員はあまり痛手を負いません。
抑止力が利かないので過大な要求を生み出してしまう可能性もあります。

制約に代わる代替え措置は必要

公務員による争議行為がいかにデメリットの大きいものだったとしても、憲法は公務員の労働基本権を保障していることには変わりありません。


最高裁はその点について
その労働基本権を制約するにあたっては、これに代わる代替え措置が講じられなければならない
としました。


では代替え措置とはなんなのでしょうか?
実はこれ、みなさんの公務員のイメージそのままなんです。(人によるけど)

リストラされない。
給与が安定している。
福利厚生がしっかりしている、、、、etc

人事院勧告とは、第三者機関の人事院が、労働基本権を制約された国家公務員のために、国会と内閣に必要な見直しを求める制度です。
公務員と民間企業の従業員の給与水準を均衡させることが目的。
原則毎年実施します。

ちなみに、一般の公務員でも、給与その他の勤務条件に関して、人事院にいろいろ要求することもできます。

違憲ではないから有罪

長々と説明がありました、結論を言えば、国公法98条2項、110条1項17号は憲法28条に違反していないとなります。

つまり
➡Xさんたちは有罪

終わりに

従来の判例を覆す判決でもありました。

東京都教職員組合事件では、公務員とは争議行為の全面禁止は違憲の疑いがあるので、合憲限定解釈という手法をとっていました。

本判決は公務員の争議行為を全面禁止にすることを認める判決であり、以降の裁判に大きな影響を与えます。

ごり子

読んでくれてありがとう!

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