【判例】警察予備隊違憲訴訟(抽象的違憲審査制を否定)

昭和27年10月8日最高裁判決

日本の違憲審査は、付随的違憲審査制をとるとされています。
判例も同様の見解とられたのですが、それが、この「警察予備隊違憲訴訟」です。
この判決で抽象的違憲審査制は否定されました。

目次
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事件の経緯

最高裁は憲法裁判所としての権能を持つのか?

1950年、GHQの意向により警察予備隊(自衛隊の前身)が設置されました。

この設置について、当時の日本社会党委員長Xが、党を代表して訴訟を起こします。
国が1951年4月1日以降に行った、警察予備隊の設置及び維持に関する一切の行為は憲法9条に違反しているとし、無効の確認を求める訴えを、直接最高裁に提起しました。

つまり、憲法第81条から、最高裁は憲法裁判所としての機能を持つと解釈し、終審としての権限の行使を求めたのです。

ごり子

X(鈴木茂三郎さん)は「青年よ再び銃をとるな」という標語になった演説でも有名だよ。

青年の諸君に対しましては、ただいま再武装論がございます。再武装を主張する当年六十余歳の芦田均氏(第47代内閣総理大臣)が鉄砲を持ったり背嚢(リュック)を背負うのではないのでございます。再武装をするとすればいわゆる青年の諸君が再武装しなければならないことは当然でございます。私は青年諸君はこの大会の決定を生かすために断じて銃を持ってはならない。断じて背嚢をしょってはならない。

1951年1月21日、委員長就任演説

争点

裁判所は、違憲審査が具体的事件の中で必要となった場合でなくとも、抽象的に法律命令等の合憲性を判断できるのか?

最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

憲法第81条

結論

抽象的な問題で違憲審査はできない

最高裁は、訴えを審理することなく却下しました。

わが裁判所が現行の制度上与えられているのは司法権を行う権限であり、そして司法権が発動するためには具体的な争訟事件が提起されることを必要とする。

具体的な事件の中でないと、違憲審査ができないとしています。
また

裁判所は具体的な争訟事件が提起されないのに将来を予想して憲法及びその他の法律命令等の解釈に対し存在する疑義論争に関し抽象的な判断を下すごとき権限を行い得るものではない。

将来的に問題が起こり得るとしても、抽象的なことで判断する権限を裁判所は持たないとしました。

つまりは日本は付随的違憲審査制を採用していると、判旨しています。

憲法第81条は最高裁を終審裁判所としているだけ

81条を読むと、最高裁に抽象的違憲審査権を認めているようにも見えます。
最高裁はこの判決で、最高裁は違憲審査権を持つことを認めつつも、あくまで司法権の範囲内で行われるとしました。

81条の意味は最高裁に憲法裁判所としての機能を認めることにあるのではなく、最高裁が終審裁判所であることを規定しているに過ぎないとしています。

下級裁判所にも違憲審査権を認めた

最高裁は、下級裁判所(地裁や高裁)にも違憲審査権を認めました。

最高裁判所は法律命令等に関し違憲審査権を有するが、この権限は司法権の範囲内において行使されるものであり、この点においては最高裁判所と下級裁判所との間に異るところはないのである。

9条には触れられませんでした。

➡最高裁HP

ごり子

読んでくれてありがとう!

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