憲法の中でも特別わかりにくいのが「公共の福祉」という概念です。
今回はこのわかりにくい「公共の福祉」を解説します。
- 公共の福祉とは?
- 一元的外在制約説
- 内在・外在二元的制約説
- 一元的内在制約説 など各学説の違い
公共の福祉とは?
公共の福祉
人権は尊いものですが、かといってなんでも許されるわけではないです。
個人なしでは社会は成り立ちませんし、社会なしでは個人は立ち行きません。
妥協点をみつけることに、人権の限界があり、公共の福祉という概念につながっていきます。(人権のバランス調整機能)
次の条文を見てください。
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
憲法第13条
公共の福祉は人権のバランス、人権の調整機能みたいなものだよ
全ての人の人権を同等に保障することは不可能だから必要になるよ
例えば、あなたの学生時代を赤裸々に書いて、私が出版したらどう思う?
嫌だよ。
プライバシーの侵害だよ
そうなるよね。
でも、私にも表現する自由があるから書く権利はあるわけでしょ。
プライバシーが守られる権利と自由に表現する権利が衝突している状態だよね。
どっちが優先されるの?
場合によりけりだけど
基本的にはより大きい利益のある方が優先されるね。
この調整が公共の福祉だよ。
つまり、全体の利益のために個人は我慢しろってこと?
ちょっと違う。
全体の利益が個人の利益より上だからって意味と捉えないで。
それは公共の福祉とは違うの。
憲法は個人としての尊重を最も大切なものとしているから。
完全な人権保障は必ず衝突を生むから、互いに妥協する必要があるでしょ。
公共利益のための制限ではあるけど、間違っても多数派のために少数派が我慢するって意味じゃなないよ
誰かと誰かの人権がぶつかってしまった時、そのぶつかった権利同士をうまく調整する機能を公共福祉と呼んでいるの
人権濫用の禁止と公共の福祉
次の条文を見てください。
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。
憲法第12条
又、国民は、これを濫用らんようしてはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
12条で言う公共の福祉はあくまで道徳的方針だとされています。
法的義務を伴うような意味は持たないのです。
文字通り受け取ってしまうと、公共の利益を追求する人権行使しか認められなくなってしまうため、憲法の基本理念、個人の尊重に真っ向から矛盾してしまいます。
もちろん濫用はダメですが、、、
公共の福祉をどうとらえるべきか?
一元的外在制約説
簡単に言えば、12条13条がいう公共の福祉は人権の外側にあって、それを根拠に人権を制限できるって説
外側?
ようするに人権全部を囲ってるって感じ。
例外ないってことね。
じゃあ22条や29条の公共の福祉の意味は?
あれは注意書きみたいなもので、特別な意味はないよ。
なんか明治憲法みたいだね。
そうだね。
明治憲法が認めていた「法律の留保」と同じだって批判されてるよ。
公共の福祉はすべての人権を制限可能
13条の文言通り、「公共の福祉に反しない限り」で権利が保障されているとし、「公共の福祉」は人権の外側にある一般的制限根拠とする説です。
「公共の福祉」を「公益」のような意味で捉えています。
公共の福祉は人権の外側にあるということは、抽象的な最高概念と捉えることもできます。
つまりすべての基本的人権を制限することが可能であり、22条1項、29条2項のような条文も特別な意味を持たないとされます。
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
憲法第22条1項
財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
29条2項
内在・外在二元的制約説
12条、13条はあくまで訓示規定で、公共の福祉には特別な意味はないとする説だよ。
それでケースバイケースで公共の福祉による人権制限を認めようって感じ
どんな時制限できるの?
22条1項、29条2項のような経済的自由権と社会権への制限は外から、つまり全体的に制限ができるよ。
その他は内在的に、つまり人権が本来持つ制約に限ってる。
他の誰かの人権を侵害しないということだよ。
互いに侵害し合うなら、妥協しようということ。
条文によって変わったりややこしいね。
その点は確かに不自然だと批判されてるね。
あと13条を訓示規定とすると、幸福追求権が導き出せなくなるとも批判されてる。
人権の種類で公共の福祉が変わる
12条、13条は訓示的規定であって、13条の「公共の福祉」は人権の一般的制約根拠にはならないとする説です。(最近は法的効力は認めつつあるようです)
制限が認められるのは、経済的自由権(22条・29条)と国家の政策的要素である社会権だけに限られるとしています。
もちろん、他の権利も無制約ではなく、他人の人権侵害を認めないなど、初めから権利に組み込まれた内在的制約が存在しています。
一元的内在制約説(通説)
すべての人権が初めから持つ制約を公共の福祉とする説だよ。
人権同士の調整機能
条文の書き方は重要ではなく、「公共の福祉」はすべての人権に論理必然的に内在しているとする考え方です。
基本的人権は平等に保障したくても、どこかで人権同士の衝突が生じてしまうため調整が必要です。
また社会権を保証する場合も、必然的に自由権を制約してしまいます。
この調整や制約が「公共の福祉」の内容です。
まとめ
- 人権を無制約にとはいかない
- 人権制約の根拠的概念が公共の福祉
- 一元的外在制約説は考え方によってはなんでも制約できる。
- 内在・外在二元的制約説は、権利によって分ける
- 一元的内在制約説は通説
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