【判例】猿払事件をわかりやすく解説!(公務員の政治活動)

本事件は

国家公務員が政治的行為を行った
国家公務員法違反に
国家公務員の政治的行為の制限は憲法違反ではないか?
原告は敗訴、罰金を科せられた

目次
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事件の経緯

公務員の政治活動の是非が問われた事件!

当時、国家公務員であった郵政事務官が選挙ポスターを掲示

1967年1月8日、第31回衆議院議員総選挙が告示されました。

当時Xは、北海道宗谷郡猿払村の鬼志別郵便局に勤務し、労働組合協議会事務局長を務めていました。
Xは、労働組合協議会の決定に従い、日本社会党を支持する目的で、同日同党公認候補者の選挙用ポスター6枚を自ら公営掲示場に掲示します。

また、4回にわたり、合計約184枚の掲示を他に依頼して配布しました。

この行為が、国家公務員法102条及び人事院規則に違反するとされ起訴されました。

職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。

国家公務員法102条

公務員は全体の奉仕者

次の条文を見てください。

すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。

憲法15条2項

公務員は一部の国民の利益だけになるような行為を認められていません。
つまり、政党や議員の利益のためだけに動くことは求められていないのです。

争点

政治的行為の自由は憲法上保障されるか
保障される場合に、公務員の政治的行為の禁止の合憲性はどのような基準によるか
違反とする規定は違憲ではないか。

結論

政治的行為は憲法21条の保障を受ける

憲法二一条の保障する表現の自由は、民主主義国家の政治的基盤をなし、 国民の基本的人権のうちでもとりわけ重要なものであり、法律によつてもみだりに 制限することができないものである。そして、およそ政治的行為は、行動としての面をもつほかに、政治的意見の表明としての面をも有するものであるから、その限りにおいて、憲法二一条による保障を受けるものであることも、明らかである。

最高裁判例

集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

憲法21条

表現の自由の1つとして、政治的行為も保障されるとしました。

公務員の政治行為を禁止すること自体は、合理的なら問題ない

行政の中立的運営が確保され、これに対する国民の信頼が維持されることは、 憲法の要請にかなうものであり、公務員の政治的中立性が維持されることは、国民全体の重要な利益にほかならないというべきである。したがって、公務員の政治的中立性を損うおそれのある公務員の政治的行為を禁止することは、それが合理的で必要やむをえない限度にとどまるものである限り、憲法の許容するところであるといわなければならない。

最高裁判例

公務員が一方の政治勢力に肩入れするというのは危険ですよね。
政権が交代したら言うことを聞かないとなると、それは国民の利益になりません。
投票権を奪うなど、度が過ぎてはいけませんが、合理的で必要な範囲内なら、憲法の許容内であるとしました。

禁止の目的、関連性、利益の均衡により合理的か判断

国公法一〇二条一項及び規則による公務員に対する政治的行為の禁止が右の合理的で必要やむをえない限度にとどまるものか否かを判断するにあたつては、 禁止の目的、、この目的と禁止される政治的行為との関連性、政治的行為を禁止することにより得られる利益と禁止することにより失われる利益との均衡の三点から検討することが必要である。

最高裁判例

目的は正当

もし公務員の政治的行為のすべてが自由に放任されるときは、おのずから 公務員の政治的中立性が損われ、ためにその職務の遂行ひいてはその属する行政機関の公務の運営に党派的偏向を招くおそれがあり、(中略)公務員の右のような党派的偏向は、逆に 政治的党派の行政への不当な介入を容易にし、(中略)本来政治的中立を保ちつつ一体となつて国民全体に奉仕すべき責務を負う行政組織の内部に深刻な政治的対立を醸成し、(中略)ひいては議会制民主主義の政治過程を経て決定された国の政策の忠実な遂行にも重大な支障をきたすおそれがあり、、(中略)。したがつて、このような弊害の発生を防止し、 行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼を確保するため、公務員の政治的中立性を損うおそれのある政治的行為を禁止することは、まさしく憲法の要請に応え、 公務員を含む国民全体の共同利益を擁護するための措置にほかならないのであつて、 その目的は正当なものというべきである

最高裁判例

関連性あり

また、右のような弊害の発生を防止するため、公務員の政治的中立性を損うおそれがあると認められる政治的行為を禁止することは、禁止目的との間に合理的な関連性があるものと認められるのであつて、 たとえその禁止が、公務員の職種・職務権限、勤務時間の内外、国の施設の利用の有無等を区別することなく、あるいは行政の中立的運営を直接、具体的に損う行為のみに限定されていないとしても、右の合理的な関連性が失われるものではない。

最高裁判例

憲法21条に違反しない

行動のもたらす弊害の防止を ねらいとしたものであつて、国民全体の共同利益を擁護するためのものであるから、 その禁止により得られる利益とこれにより失われる利益との間に均衡を失するところがあるものとは、認められないしたがつて、国公法一〇二条一項及び規則五項 三号、六項一三号は、合理的で必要やむをえない限度を超えるものとは認められず、 憲法二一条に違反するものということはできない。

最高裁判例

結果的にはXは敗訴しましたが
有罪・合憲とする裁判官は11人、違憲・無罪とする裁判官は4人、判断が分かれた判決でもありました。

ごり子

読んでくれてありがとう!

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